多頭飼いの家庭が猫エイズに感染している猫を迎え入れるときの注意

多頭飼いにおける猫エイズの注意点

多頭飼いは病気に注意!

先住猫がいる多頭飼いの家庭で新たな猫を迎える時には、新入り猫の病気に十分な注意を払う必要があります。新入り猫がずっとノラ生活を送っていたとか、飼い猫であっても、家の中と外を自由に出入りできる環境だったとか、あるいはそうした猫が産んだ子猫の場合には、なにかしらの病気に感染している可能性が考えられますから、先住猫との合流は慎重に行うようにしましょう。

伝染力の強い病気に感染している猫を不用意に先住猫と合流させてしまうと、取り返しのつかない結果を招くことにもなりかねません。多頭飼いの場合には特に注意が必要です。合流前に必ず動物病院での健康チェック、感染チェックを行い、特に問題がないとわかるまでは、ケージで飼ったり別の部屋に隔離しておくなどして、先住猫との接触は極力避けるようにします。


猫エイズに感染した猫との同居

猫エイズのウイルスは他の伝染病と異なり、感染力が弱いので、唾液などを通して感染してしまうという心配はまずないとされています。したがって、多頭飼いであっても、猫同士が激しいケンカをする可能性でもないかぎり、猫エイズに感染している猫との同居について、それほど神経質になる必要はありません。(⇒猫エイズの感染経路)

ただし、相性の悪い猫がいる場合には要注意。咬み合いの喧嘩になる前に、感染している猫をケージ飼いにするとか、別々の部屋で生活させるなどして、猫エイズの感染を防ぐ工夫をしてください。


猫エイズ以外の伝染病

猫エイズの他にも気をつけなければならない伝染性の病気としては、以下のようなものが挙げられます。

(1) 凡白血球減少症(猫急性腸炎・猫ジステンパー・FPLV)
もっとも怖い伝染病とされています。パルボウイルスによって引き起こされるもので致死率は高く、細菌による敗血症と吐き気と下痢による脱水症状などにより、子猫などの場合には急死してしまうことがあります。ウイルスは排泄物のなかに多く含まれていますが、消毒液にも強いという抵抗力を持っているため、人間が運んでしまうこともあります。予防としてはワクチンの接種があります。

(2)猫カリシウイルス感染症(FCV)
カリシウイルスによって引起されます。クシャミ・鼻水・発熱などの症状がみられ、症状が進むと舌や口周辺に潰瘍がみられ、ときに急性肺炎を起こす肺炎タイプがありますが、このタイプ以外であれば1~2週間で回復に向かいます。ほとんどが感染猫との接触によって伝染しますが、空気感染や手、衣服、食器などからの感染もありますので、病気の猫が使った食器やトイレは塩素漂白剤などで消毒する必要があります。予防としてはワクチン接種があげられます。

(3)ウイルス性鼻気管支炎(FVR)
ヘルペスウイルスによって引き起される病気です。それほど強いウイルスではないので、通常2週間程で回復しますが、生後6ヶ月未満の子猫や抵抗力のない猫の場合には病気の進行が早く、急激な衰弱や脱水症状が起こって死亡することもあります。人間の服や靴などを介しての感染に注意し、感染猫が使った食器、便器等は塩素系漂白剤で消毒するようにしましょう。ワクチンの接種により予防することができます。

(4)猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
レトロウイルスの一種である、オンコウイルスによって引き起されます。主に感染猫の唾液や尿、便、血液などから感染しますが、猫の咬み傷には特に注意が必要です。感染力は弱いのですが、いったん感染すると持続感染となり、免疫力が低下することからいろいろな病気が引起され、感染後2~5年以内に死亡するケースが多く見られます。感染している猫との食器を共有は避け、ケンカを防止する意味でも、去勢・避妊手術を受けさせておくことが大切です。ワクチン接種が不可欠ですが、接種前には検査で感染していないことを必ず確認するようにしましょう。

(5)猫クラミジア感染症
ネコクラミジアによる感染症で、感染猫との接触することで、この菌が口、鼻、目より侵入して感染します。主な症状は粘着性の目ヤニを伴う慢性持続性の結膜炎(目の周りの腫れ)で、通常2~6週間で治癒しますが、重症化すると死亡することもあります。一度感染すると、分泌液や糞便中にクラミジアを排出し続けますので、多頭飼育の場合、一匹が感染すると全員に感染する可能性があります。猫クラミジア感染症のワクチンは、5種混合もしくは7種混合ワクチンに含まれていますが、子猫、多頭飼い、子供のいる家、外を自由に往き来するなどがないかぎり、ワクチンの必要はないとされています。

(6)猫伝染性腹膜炎(FIP)
致死性の高いウイルス疾患の一つです。FIPウイルスの元となる猫腸コロナウイルスは、感染した猫との接触、糞や尿に排泄されたウイルスの経口、経鼻的感染、またノミやダニを媒介にした感染があります。このウイルスは世界中のあらゆる地域に存在しているため、外に居たことのある猫の場合、どこかで感染している可能性があります。アメリカでは有効性が疑問視されているものの、ワクチンが開発されていますが、日本にはなく、予防は感染猫との隔離しか方法がありません。


ワクチン接種で予防できる感染症

病気の予防に有効な手段としては、ワクチンの接種があります。動物病院で接種できるワクチンには以下のものがありますが、現段階では3種混合ワクチンが一般的です。猫エイズのワクチンとこれらのワクチンを同時に打つことはできません。また、猫エイズワクチンについては評価が分かれていますので、獣医師に相談をした上で接種するかどうかを決めたほうがよいでしょう。(⇒猫エイズワクチン)

(1)3種混合ワクチン
猫汎白血球減少症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症

(2)5種混合ワクチン
猫汎白血球減少症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫白血病ウイルス感染症・猫クラミジア感染症

(3)7種混合ワクチン
猫ウイルス性鼻気管炎 ・猫カリシウイルスFC-28株・猫カリシウイルスFC-7株 ・猫カリシウイルスFC-64株 ・猫汎白血球減少症・猫クラミジア感染症・猫白血病ウイルス感染症



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