猫エイズに対するインターフェロン投与の効果と副作用

猫エイズの治療に対するインターフェロンの効果

猫エイズ感染と治療

猫エイズに感染したからといって、即猫エイズを発症するというわけではありません。感染後、急性期から無症状キャリア期を経てエイズを発症するのですが、その期間はおよそ4~5年、中には10年以上発症しないまま、みごとに天寿をまっとうする猫もいるのです。

ただし猫エイズに感染してしまったら完治は望めません。したがって、感染後はその時々の症状に合わせて、インターフェロン療法や抗生物質、ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤などを投与し、対症療法を中心に治療を進めてゆくことになります。(⇒猫エイズの治療)


インターフェロンとはどのようなものか

インターフェロンというのは、動物の体がウイルス感染を受けた時などに体内で作られるタンパク質の一種で、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用(坑ガン作用)、免疫増強作用の3つの働きがあります。

ウイルス感染が起こると、まず感染した動物自身の細胞から内因性のインターフェロンが量産され、AVP(抗ウイルスタンパク)を活性化させてウイルスの増殖が抑制されますが、ウイルスの感染量が多いと、内因性インターフェロンでの抑制は追いつかなくなってしまいます。そこで、外部から大量のインターフェロンを(外因性インターフェロン)投与して、治療を進めるのです。

免疫機能が活発化し、ホメオスターシス(機能を常に正常に保つ働き)が補強されれば、生体の防御力が増強しますから、猫エイズが発症しないように働きかけることができるというわけです。ただし、症状が出現してからでは、ホメオスタシスの補強が困難となり、有効なインターフェロン療法は難しくなりますから、ウイルスに対するインターフェロンの投与は初期、あるいは予防的に投与されることが有効であるとされています。


ネコインターフェロン『インターキャット』

動物病院で投与されるネコインターフェロン『インターキャット』は、東レがネコ用に開発したネコインターフェロンの製品名で、そもそもは猫カリシウイルス感染症の治療薬として開発されたものです。

現在では、猫カリシウイルス感染症の他、猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの他、悪性腫瘍、歯肉炎、口内炎、腎不全などの治療に幅広く使われています。ただ、治療効果についてはまだ未知数であることから、カリシウイルス症以外のインターフェロンの過剰投与については疑問視する獣医師もいます。


ネコインターフェロンの副作用

メーカーが告知している主な注意事項や副作用には以下のようなものがあります。こうした症状がみられたときには、投与を中止して適切な処置をしなければなりません。

◆注意事項
(1)黄疸のあるものには使用しない。
(2)早期治療に使用すること。末期の症例や他の病気との合併症に使用すると、まれに症状の悪化をみることがある。

◆副作用
(1)嘔吐がみられることがある。
(2)軽度の白血球数、血小板数及び赤血球数の減少がみられることがある。
(3)投与終了後3~6時間で発熱をみることがあり、まれに40℃以上の高熱や激しい嘔吐等があらわれることがある。
(4)まれにアナフィラキシーショック(虚脱、尿失禁、流涎、呼吸困難等)があらわれることがある。
(5)まれに興奮、流涎、ねむけ、沈うつ等がみられることがある。


粉末のインターフェロン『ビムロン』とその副作用

インターフェロンは、人にはヒトインターフェロン、猫にはネコインターフェロンといったように、それぞれの動物種に適したものが開発されていますが、動物用ヒトインターフェロンアルファ経口投与剤『ビムロン』は、動物種の違いに関係なく同じ効果が得られるものとして開発されました。

ただし、このインターフェロンの適応症は本来は仔牛に限られたもので、猫への投与は適応外の処方となります。ビムロンの副作用については、マウス、イヌ、ウサギ、ラット、サルについては、投与しても異常が認められないということが確認されているのですが、猫については実験対象になっていないため、どのような副作用が現れるかはわかっていません。

インターキャットやヒトインターフェロンと異なり、作用が穏やかで副作用はないとされてはいるものの、安全性についてはまだ未確認の状態であるというのは、飼い主としてはいささか不安です。即効性はなく、効果は個体差があり、効かないケースもあるという報告もあるようですから、ビムロンを投与してみたいという場合には、獣医師との十分な話し合いを持つ必要があります。



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